【第4回】 映画「セブン」レビュー

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私は小学生の頃に江戸川乱歩を読み耽ったのを機に、ちょっと暗い雰囲気や世界観に惹かれていた時期があって、

その影響を引き摺ってか、サスペンスやちょっと不思議系ホラーや推理モノの本や映画が今でも好きです。

この「セブン」は、そんな趣味を持った多感な年頃のマイハートにざっくり刺さった罪な映画です。

Detective board with photos of suspected criminals, crime scenes and evidence with red threads, retro toned

グロさがトラウマになる危うさ…、でも傑作!

映画館で見ることはできませんでしたが、TSUT@Y@にて準新作の当作品をワクワクしながら借りたのを覚えています。

さて、今回当作品を改めて鑑賞するにあたって事前に色々調べてみたのですが、

セブンはそのシナリオや豪華俳優陣の演技以外でも、演出や表現といったものの評価も高く、

その中でよく語られるものの中に「銀残し」というものがあります。

銀残し(ぎんのこし)とは、Wikipediaよると、

フィルムや印画紙での現像手法の1つで、銀を取り除く処理を意図的に省くことにより、
フィルムや印画紙に銀を残すというもの。
映画においては銀残しを用いることにより、映像の暗部が非常に暗くなり、画面のコントラストが強くなるため、
引き締まった渋い映像になる。

とのこと。

監督のデビッド・フィンチャーはこのセブンの制作にあたって、観る者に与える恐怖とリアリティを追及したとのことで、この銀残しはその狙いを現実化するのに確かに一役買っているなと感じます。

また、この「銀残し」は日本で生まれた手法だそうで、1960年の邦画「おとうと」で生み出され完成されたと言われています。

日本発の技術が世界の知る名作で活かされる、嬉しいことですね。

映像表現も素晴らしいですが、脚本の残酷さとスプラッターとも異なるグロさの表現もまた魅力です。(初見当時の自分には少々強烈でしたけど)

では、映画「セブン」のレビューをお届けします。どうぞ。

【セブン】基本情報・キャスト

〇タイトル
『セブン』(原題『 Se7en 』)

〇上映時間
126分

〇公開日
1996年1月(日本)
1995年9月(アメリカ)

〇脚本
アンドリュー・ケビン・ウォーカー

〇監督
デビッド・フィンチャー

〇出演者
ブラッド・ピット(デヴィッド・ミルズ役)
モーガン・フリーマン(ウィリアム・サマセット部長刑事役)
ケビン・スペイシー(ジョン・ドゥ役)
グウィネス・パルトロー(トレイシー・ミルズ役)

〇一押しポイント
フィンチャー監督を奮起させたといわれるシナリオと、
あらゆる手法で表現される不気味さとリアリティ…

『 ミルズとサマセット 』舞台は雨の街

本作は、特定の地名は明かされませんが、

降り続く雨の中で絶えない事件と喧騒が象徴的な

アメリカのとある都会が本作品の舞台です。

ある日、夫婦喧嘩の末に妻が夫を撃ち殺す事件が起こります。

ありきたりな事件におざなりな対応しかしない刑事たちとは対照的に
現場で熱心に検証を行う定年間近の老刑事サマセット、

この日サマセットもとに配属された新人刑事がミルズでした。

事件に事欠かないこの街で手柄を立てようと意気込むミルズと定年を一週間後に控えたサマセット。

対照的な二人の出会いからこの話は始まります。

月曜日『 第1の事件 暴食 』


翌日の月曜日。

サマセットとミルズは殺人事件の連絡を受け現場に急行します。

被害者は規格外の肥満男で、スパゲティに顔を突っ込んだ状態で発見されました。

調査の結果、男は何者かによって拘束された挙句、

脅されながら、無理やり食事を摂らされ続け最後は

腹に蹴りを受け内臓破裂で死亡したことが分かります。

汚物にまみれた現場は凄惨そのもの。漂う腐臭まで感じとれるようです。

 

火曜日『 第2の事件 強欲 』

Law Concept – Close up Businessman in Black Business Suit Arranging Small Wooden Pieces with Law Text on Black Background.

火曜日。

とあるオフィスビルで弁護士が殺されます。

右手以外の自由を奪われており、鑑識によれば

右手で自分の肉1ポンドを切り出すように強要され、苦悶の末死んだと思われるとのこと。

そして、カーペットには「GREED(強欲)」の文字。

1ポンドはおよそ450グラム、ペットボトル1本分弱ですから結構な量ですよね。

ベニスの商人になぞらえての犯行ですが、それを現実にやらせる犯人の異常性が伝わります。

その後、第1の事件の検死の結果が連絡あり、被害者の胃袋からプラスチック片が見つかります。

サマセットは冷蔵庫の前の床がはがれたものであるものと推測、冷蔵庫をずらした際にはがれたと考えます。

再び現場に向かったサマセットが冷蔵庫をずらしてみると、

表れた壁には「GLUTTONY(暴食)」の文字が。

さらにはミルトンの「失楽園」の言葉が書かれたメモを発見します。

『地獄より光に至る道は長く険しい』

この2つの事件からサマセットはこれらが「七つの大罪」にちなんだ連続殺人だと推理するのです。

連続する猟奇的殺人と現場に残される絶妙なヒント。

掴みとしては、本当に秀逸であると感じます。

水曜日『 ディナー 』

Christmas table with candles, flowers and glass cups.

水曜日の朝。

出勤したサマセットのデスクにミルズの妻トレーシーから今夜夕食に招きたいとのことの電話が。

その夜、ミルズとトレーシーの元に訪れたサマセット。

手料理食事と他愛のない話に笑顔がこぼれます。

長らく一人の生活が続いていたサマセットには嬉しいひと時だったでしょう。

場面的にはちょっとひと休憩といったところですね。

しかし、こんな場面あるからこそ後半の怖さが際立つという上手さもあったりします。

お互いに何となくやりにくさを感じていた二人ですが、この日を境に協力し合う仲になっていきます。

食後、酒を交わしながら事件を振り返っていたサマセットとミルズは弁護士の妻から聴取すべく早速現場へ出向きます。

この時、サマセットは飾られた絵の不自然さに気付き、

外してみるとそこには“第三者による指紋”で

『HELP ME』の文字が書かれているのでした。

木曜日『 第3の事件 怠惰 』

Three mandarins in the drying out stage. Fresh mandarin, a mandarin that begins to deteriorate, and spoiled rotten with mold. Overdue fruitt

次の日の木曜日。

指紋の持ち主がビクターという男のものであることが判明します。

ビクターは長い間精神を病み、過去に麻薬・強盗・少女暴行などで前科がありました。

サマセット達は、すぐさまビクターの所在を突き止め急行しますがそこで待ち受けていたのは、ベッドにくくりつけられた薬剤投与の末、ミイラのように干からびたビクター本人だったのです。

ビクターは真犯人に1年ほど前からベッドに縛り付けられ、手足を落とされ抵抗ができない状態にされました。日々衰弱していく様子の写真や、爪や排せつ物のサンプルが部屋に置かれています。

まさに真犯人の異常性極まれりといったところでしょうか。

そして、壁には「SLOTH(怠惰)」の文字…

弁護士の事件の犯人と思われた人物は、真犯人による第3の犠牲者だったのです。

発見直後は死んだと思われていたビクターが、死亡確認にために目にライトを当てられたショックで跳ねる瞬間は私もドキッとしました。
(結局は死んでしまったようですが…南無南無)

今回の事件でも手がかりは得られず、二人は肩を落とします。

金曜日『 犯人との接触 』

School children are having fun playing in the city fountains after school.

金曜の朝サマセットはトレーシーに呼び出され、ある相談をされます。
その内容とは、妊娠をしたが、雑多で治安の悪いこの街で産み育てるのが不安である、夫であるミルズにも話せないでいる……との相談でした。
ここでサマセットは自らの経験を踏まえ、熟年者らしいアドバイスを送ります。
彼の優しさと過去が仄見える場面ですね。

そして、この妊娠の事実は本作特有の苦みを増幅させる強烈なスパイスにもなります…

さて、なかなか決定的な尻尾を出してくれない犯人ですが、サマセットは、ミルズの真犯人は図書館から情報を得ていた、との発言から、図書館の情報と(FBIのコネを使ったウラ情報)で犯人の候補が割り出せないかと一計を案じます。

読みは見事にヒット。

「ジョン・ドウ (John・Doe) 」という名前と住所が浮上し、二人は聞き込みに向かいます。

ちなみにこのジョン・ドゥという名前、日本でいう「名無しの権兵衛」や「どこかの誰かさん」のようなモノで、あからさまな偽名ですね。

変哲もない総合住宅で、ジョン・ドゥの部屋をノックしますが、反応がありません。

いないのでは仕方ないと、あきらめて引き上げようとした二人ですが、廊下の向こうから不審そうにこちらを見る人影に気付きます。そしてその人影は、コートのポケットをまさぐったと思った途端に二人を目掛けて発砲し、逃亡するのです。

間一髪身を躱したミルズ達は逃げる人影ジョン・ドゥを追いかけます。

鬱陶しい雨の質感が不快感と不吉な予感を演出するかのよう。ここでも、銀残しの効果がされていますね。

雨中の追いかけっこでしたが、直情的に追いかけるミルズは隠れたジョンの不意打ちに合い、あわや絶命の危機に直面します。

ミルズの頭に銃を突きつけるジョン、しかし、とどめを刺さずその場を去るのです。

……仕切り直しての二人。ここまでの目に遭っていても、正式な手続きを踏んでいないため、ジョン宅に踏み入る強引な捜査はできません、しかし、興奮冷めやらぬミルズは、犯人のヤサを見つけておいてその場を去ることなど到底できません。諫めるサマセットを振り切りドアを蹴破り踏み入ります。中には被害者の写真・資料の数々、明らかに真犯人のものであることを示していますが、指紋の類が一切見つからず、決定的な逮捕事由に結び付けられません。

この追いかけっこシーンは、周到な準備をしてきた犯人のジョンが、唯一慌てた場面だったかもしれません。しかし、銃を持ち歩いていたところからすると、ある程度の想定と備えはあったのか…。そして、ラストに向けた彼の演出は、この時固まったのではないのかと思います。

また、ここまでの場面でジョンの顔(“ジョン本人として”の顔)が明確に映し出されることはありません。そのことが、終盤の彼の不気味さをより助長しているように感じます。

土曜日『 第4の事件 色欲 』

ジョンの家での証拠物品を検証する最中、あるクラブで殺しがあったとの情報が入り、ミルズ達は現場に急行します。

被害者は売春婦。犯行は(やんわりとした表現に留めますが)、ジョンに脅された男が半狂乱になりながら被害者の下腹部を繰り返し刺すといった残酷なものでした。

前日に自宅を突き止められながら、翌日にきっちり残りの犯行に及ぶあたり、ジョン・ドゥの性格と強硬な意思が伺えますよね。

日曜日『 第5の事件 高慢』 残る嫉妬・憤怒は…?7つの大罪に幕は下り…

神が世界を創造後休息した日とされる日曜日。

しかし、この期に及んでミルズとサマセットにそんな休息が訪れるはずもなく、モデルの死体が発見されたとの通報が入ります。

被害者は第五の犯行『高慢』の犠牲者でした。顔は切り刻まれ、鼻も削がれている状態(でも犯行時点は死なない程度)、そして、左手には睡眠薬、右手に電話。醜い顔で絶望に満ちた人生を送るか、それとも死ぬか…、そのモデルに対し、ジョンが残酷な二択を迫った結果でした。

直後、追いかけてきた血塗れのジョン・ドゥが警察に出頭してきます。果たしてその血は誰のものなのか…

今後予想される事件(被害者)は残り2つ…物語はラストに向けて加速します。

取り調べの中でジョンは、これまでの犯行の自供と引き換えに、ミルズとサマセットの二人に自分が指定する場所に一緒に来てほしいと取引を持ち掛けます。

取引に応じることにしたミルズとサマセットは、ジョンが示す場所へと向かいます。

これまで続いた雨の場面と打って変わって、晴れ渡った風景が印象的です。

ジョンはいつからこの一連の事件の締めくくりをイメージしていたのか…

荒野のフリーウェイを車で走らせる道中、運転席のサマセットと助手席のミルズはジョンと様々な会話をしますが、私の印象に残ったのは、ジョンが被害者たちの罪を贖わせるために今回の犯行に及んだのだということです。

ジョンは自分が(関節的なものを含め)手を下してきた弁護士やモデルといった連中は罪深く、彼として看過できるものではなかったというのです。

私の学生時代でも、テレビのニュースで理不尽な犯罪を起こす輩に対して本気で憤る知人がいましたが、ジョンはそのもっと極端な例なのかなぁ、なんて思ったりしました。

ここはジョンがやや感情的になる唯一の場面でもあります。

そして、これまでいくつかあった若さゆえの感情的なミルズと、理性的なサマセットの対比も印象的ですね。

目的地に着いた、三人ですがそこは、送電線の鉄塔が立ち並ぶ寂しい荒野でした。

そこに一台の宅配業者の車が到着します。爆発物である可能性も考慮して恐る々々段ボールを開けるサマセット。それはジョンからミルズへ送られたもので中身は…

ミルズの最愛の妻トレーシーの首でした。(安心してください!画面には映されませんよ!)

驚きと焦りの中でも、ジョンの狙いに想いを巡らせるサマセット。

ミルズに銃を捨てるように叫びますが、ジョンに犯行の自供と妻の妊娠の事実を聞かされるミルズは湧き上がる動揺と怒りにサマセットの声はまともに聞くことができません。

残る『嫉妬』と『憤怒』の罪の犠牲者、それは、

幸せな家庭に❝嫉妬❞したジョン・ドゥ本人と、復讐に沸き立つミルズだったのでした。

ミルズが撃ち殺せばまんまとジョンの思惑通りの犯行の完結、つまりジョンの勝ち、我々の負け。ギリギリの理性の中で苦しむミルズですが、結果的にジョンに向けて引き金を引きます。

制作者チームとしては、他にもラストを検討しており、その中にはサマセットがジョンを撃つという、ものもあったようです。しかし、監督フィンチャーは、「ミルズが葛藤の末、ジョンを撃つ」という最悪のラストにこだわったそうです。そして、ブラッド・ピットは見事にそのラストを表現し切りました。

彼の苦悶の表情、銃を何度も構え直す様子は何度観ても本当にいたたまれません…、まさに、本作に画竜点睛ともいえる一点を添えたシーンと言えます。

後味の悪さは一級品でありながら、セブンは、紛うことなき名作・傑作とされ、考察も山ほどあります。皆さんも是非ご覧になり、罪とは何か考える機会とされてはいかがでしょうか。

では、また次のレビューでお会いいたしましょう!

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