【第8回】映画「レオン(LEON)」レビュー

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Shot of unrecognizable person with gun superimposed over group of people talking in an office corridor. The city is NY.

私には将来、必ず行ってみたい街というのがあって、
その中でアメリカのニューヨークはかなり若い時からランクインしていた気がします。

そのきっかけってのいうは、いくつかはあったのかもしれませんが、
その一つがこの「レオン」だったような気がします。

大都会って意味では、東京も似ていて
上京して、東京に慣れた今観てみると、
切なさだとか、もの悲しさが胸に刺さるところがあります。

当人たちにとっては大きな喜怒哀楽も、少し俯瞰すると人や建物、喧騒に飲み込まれてしまい
小さな問題になってしまうような、
就職とともに上京してきた今の自分には、その虚しさが少し分かる気がして…

良い奴もいるんだけど、悪い奴ってのがやっぱり目に付いちゃって、
いい思い出もあったはずなのに、困難な現実に飲まれてしまう。

私にとっては、現実に向き合う映画がこれなのかもしれないです。

救いの無さがブラックコーヒーの苦みのようにクセになる、そんな映画がありますが
レオンもそんな映画の一つのような気がします。(ちなみに私はブラックは飲めない…)

本作は監督のリュック・ベッソンにとって、長らく構想を温めていた「フィフス・エレメント」
を作成するための、製作資金を稼ぐために作ったとのエピソードがありますが、
今だに日本国内、米国、フランスに根強いファンは多いようですね。

それでは、レオンのレビューです。

【レオン(LEON)】基本情報

〇タイトル
『レオン(LEON)』

〇上映時間
110分(劇場版)
133分(完全版)

〇公開日
1995年3月25日

〇監督、脚本
リュック・ベッソン

〇出演
ジャン・レノ (レオン・モンタナ 役)
ナタリー・ポートマン (マチルダ・ランドー 役)
ゲイリー・オールドマン(ノーマン・スタンスフィールド 役)
トニー (ダニー・アイエロ 役)

〇エンディング曲
スティング『シェイプ・オブ・マイ・ハート』

あらすじ

ニューヨークで一人「掃除屋」を生業としていたレオンは、レストラン経営者で依頼主のトニーから仕事を受け、それらを完璧にこなす毎日を送っていました。

とある日、仕事から帰ったレオンは、アパートでマチルダを見かけます。彼女の顔に痣があるのを見て、
「どうしたんだ?」と尋ねるが、マチルダは「転んだのよ」と返す。
明らかに転んだ痣ではない様子の彼女は、レオンに「大人になっても人生はツラい?」と問い、これに「ツラいさ」とレオンは答えます。

これが二人の出会いでした。

マチルダは、実の父親ジョセフから虐待を受けており、継母からや、連れ子の姉からは冷遇される息苦しい日々を送っていました。

父のジョセフは麻薬の密売人。しかし、麻薬密売組織の麻薬を横領をしていることが、スタンスフィールドにバレ、追い詰めらます。

スタンスフィールドは、麻薬取締局の捜査官でありながら、裏で麻薬密売を始めとした、各種の犯罪の糸を引き、さらには自身も麻薬の常習者。本作の黒幕です。

その翌日、再びジョセフの元に訪れたスタンスフィールドは、ジョセフ達家族を次々に射殺し、
ジョセフ自身も己が運命を悟り、反撃を試みますが、これを機に銃撃戦になり、マチルダの弟マイケルも巻き込まれて殺されてしまいます。

マチルダ本人はというと、買い物に出ており、この騒ぎの最中にはいませんでした。

しかし、アパートに帰り着くとこの様子。
平静を装い自分の部屋を通り過ぎ、レオンの部屋に助けを求め、彼は悩んだ末、マチルダを匿うことにを決心したのでした。

一時匿いはしましたが、一匹オオカミにレオンにとって、マチルダは足手まといで厄介者であることは明らか。
何とか説き伏せ、ここを出ていくように諭しますが、マチルダは出て行こうとはしません。
何も持たない少女は出ていけばスタンスフィールド達に忽ち見つけられ殺されてしまうでしょう。

レオンの職業が「殺し屋」であることを知ったマチルダは、レオンの身の周りの世話をする代わりに、
自分を居座らせ殺しのノウハウを教えることを提案します。

こうして始まった、時にほのぼのとした殺し屋と少女の同居生活でしたが、
二人の生活を続けていくうちに、レオンの中にも温かいモノ芽生えていくようでした。

そんなある日、父が隠していた現金を探しに自宅に忍び込んだマチルダは、丁度居合わせたスタンスフィールド達の話を聞いてしまい
弟を殺した組織の背後に麻薬取締局があり、スタンスフィールドがそのボスであることを突き止めてしまいます。

デリバリーを装い麻薬取締局に単身乗り込むマチルダは、スタンスフィールドに簡単に正体を看破され逆に囚われの身となってしまいますが、
レオンもマチルダの置手紙を見て、麻薬取締局に救出に向かいます。

ベストを尽くした結果、マチルダの救出に成功はしたものの、
レオンがマチルダの家族の復讐を始めていたこともあり、
スタンスフィールドはトニー配下の殺し屋にその犯人がいることを目星をつけていました。

急速に接近する、スタンスフィールドとレオン達。

スタンスフィールドは、市警の特殊部隊を総動員し、
レオンを追い詰めますが、

レオンも簡単にはやられません。

先行部隊を退けるも、まさに四方を囲まて万事休すの状態でしたが、

何とかマチルダだけは逃がそうと奮闘します。

逃げ道を確保すると、レオンを置いていけないと泣いてすがるマチルダに
友人の観葉植物とともに脱出してほしい、一時間後にトニーの店で落ち合おう
と約束します。

何とかマチルダを逃がすことに成功し、自身も傷ついた特殊部隊を装い脱出を試みます。
しかし、これをスタンスフィールドは見逃しません。
レオンがアパートから出る直前、背後からレオンを撃ちます。

倒れ込むレオン、風前の灯である彼を見下ろすスタンスフィールド。

しかし、レオンはただで死ぬ気はありませんでした。

自らの胴に巻いた手りゅう弾のピンをスタンスに預け、
「マチルダからだ」と一言。
スタンスフィールドも「クソッ…」と一言。

轟音とともに消し飛ぶ二人…、

また一人になってしまったマチルダは以前逃げだしたスペンサー学園に戻り、
レオンに託された物静かなをが学園の庭に植え「もう寂しくないわよ」と呟くのでした。

キャストについて

レオン(ジャン・レノ)

〇ジャン・レノが演技で心掛けていたこと

殺し屋・レオンを演じるジャン・レノは公開当時40代半ば。
13歳のナタリーの恋人としては無理があるように感じますが、
ジャン自身はレオンを演じるにあたり、純粋さや子供っぽさに気を使っていたそうです。
字が読めないなどの設定以外でも、言葉を探しながら話すような感じや、オフの楽しみである映画で少しはしゃぐ様子などは、
なるほど上手いなぁと感じさせるところがありますね。

大人びた少女のマチルダと、人間的(知識的)に未熟なまま大人になってしまったレオンが互いに歩みよることで、
『純愛』の面での不自然さ少し解消しているようです。

〇殺しのスキル

冒頭、レオンが圧倒的な殺しスキルでマフィアを殲滅するシーンは、レオンの冷徹なヒットマンとしての凄みを印象付けるモノでしたが、
中盤、終盤にかけて傷を負うシーンや、闇雲にマチルダの仇を取りに回る様子はこれと比べて、「レオンは弱くなっていった」なんて言われることもあるようです。
確かに、完全無欠の殺し屋は、束の間の安息を得ることで、その牙を少し丸めてしまったのかもしれません。
しかし、その替わりにレオンの心に芽生えた人としてのぬくもりは、忘れていた人としての幸せを思い出させていたのではないでしょうか。
機械のように殺し屋の仕事をこなしていた時期のように、武器を使えなくなっていったとしても不思議ではないですよね。

マチルダ(ナタリー・ポートマン)

〇ナタリーの演技の見事さ

本作が映画デビューとなったナタリー・ポートマンは2000人を超える候補者の中からマチルダ役を勝ち取ったそうです。
デビュー作とは思えない演技力はいたるところに散見されますが、
特に、悲哀や嘆きを演じるシーンには女優としてのポテンシャルを感じます。
オーディションにおいて、ナタリーの弟の死を悲しむマチルダの演技は監督を唸らせるものだったとの逸話も納得です。

〇大人びた性格と滲み出る幼さ

自分の家で麻薬取締局による“捜査”が行われ、玄関先で実父が倒れているのを見るなり、
素知らぬ顔で通り過ぎる機転は、序盤ながら年齢にそぐわない賢さを感じさせますし、
今後の生活についてレオンと取引する姿はとても大人びて見えます。(さすがに“18歳”は無理があるとは思うが…)

しかし、TVでトランスフォーマーのアニメを見ている様子や、レオンと「役当てゲーム」ではしゃぐ様子はやっぱり子供。

映画全体を通して感じる不安定さを体現しているのは彼女なのかなと感じます。

スタンスフィールド(ゲイリーオールドマン)

Businessman holding white mask in his hand dishonest cheating agreement.Faking and betray business partnership concept

〇印象的な演技で魅了するゲイリー・オールドマン

麻薬浸りの汚職捜査官を演じるゲイリーは、年を重ねた今でこそ、思慮分別のある役柄も多く演じていますが、
当時、クセのある悪役を演じさせたら右に出る俳優はいないと言われていました。
また、常に役に対する研究が徹底されていることでも有名です。

〇スタンスフィールド(通称:スタン)としての魅力

先述のように、ゲイリーの念入りな役作りと、確かな演技力に裏打ちされたこの役はとても魅力的です。
部下は大事にするとか、女子供には優しくするとか、人知れず守っている信念があるとか、
そういった「実は良い人」的な要素は一切ない徹底したクズっぷりなのに、
なんかカッコいいんです。
彼の真似をして、

  • フリ〇クをスタンがヤクを決める時みたいにカリッとやる
  • すだれとか、のれんを両手ですうーっとやる
  • 全員集合の号令は「エッブリワンッッッ!!」と言う

みたいなことを、やってみた(やってみたい)人は案外多いのではないでしょうか。

ネタバレ・感想

公開版と完全版

映画公開されたものは、実は本来監督が公開したかった一部のシーンがカットされたものです。
カットシーン22分が加わったものが『完全版』と呼ばれており、
マチルダのより実践的な暗殺訓練シーンや、初仕事後の食事シーン、やや性的描写の強いシーンが
含まれており、公開版と完全版を比べると二人の関係性の印象がだいぶ違ったものになります。

カットシーンは、刺激的である、不健全であるとの理由から、やむなく公開が見送られた経緯があるようです。
特に「刺激的」とされるシーンについては、マチルダの親から猛抗議があったという話もあり、
演者のナタリー自身も当時のこのシーンを回顧して、不快感を示すコメントを残しています。

個人的には、マチルダが初仕事後にレオンとレストランで酒を飲むシーンのマチルダが可愛くて好きなのですが、
ここは未成年の飲酒シーンなので「不健全」といった判定のようです。

ハッピーエンドか、バッドエンドか

Good/bad, right/wrong, happy/sad, thumbs-up/thumbs down icons. Round and square icons with a smiley face, a sad face, thumbs-up and thumbs down symbols.

救いの無さがある種の魅力である作品ですが、
考えようによってはレオンは救われていたのかもしれない、とも思えます。

市警や特殊部隊からの完全包囲の中、マチルダを逃がすレオンの表情は、殺人マシンの頃の顔では無かったし、
生きてここを乗り切りたいという意思も感じられるようでした。

結果的に、レオンの脱出策はスタンに見破られ、生き延びることはできませんでしたが、
自爆でスタンを道連れにし、仇を討てた事はある種の救いもあったとも言えそうです。

マチルダのこれまでの人生は、恵まれたものではなく、それゆえ少々歪んだ成長をしたところもあったかもしれませんが、
彼女にとって、レオンとの死に別れは、普通に、平穏に、という意味では、
良い方に働くのでないかと思わせるものがあります。

殺し屋としての未来に明るいものがある可能性はとても低い。
そう考えれば、マチルダの学園での生活は作中で見出せる限りののハッピーエンドだったのかもしれません。

ラスト、マチルダの学園長とのやり取りで本当にあったことを話すシーンや、
レオンに託された観葉植物を植えるシーンは
過去との決別のようにも見えます。

音楽・主題歌について

映画の音楽はエリック・セラという、フランスの作曲家が担当しており、
「ニキータ」や「フィフス・エレメント」といった他のリュック・ベッソン映画の他、
「007 ゴールデンアイ」の曲付けで有名です。
作中で流れる曲の数々も、旋律、音色が見事ですが、いずれもどこかもの悲しさが印象的です。

エンディングとして流れる
スティングの「シェイプ・オブ・マイ・ハート」は
寡黙なポーカープレーヤーを顕わしている曲のようで、直接映画の内容を顕わしたものではありませんが、
醸す雰囲気は映画を象徴する曲といった感じですね。

まとめ

作中、レオンが友人だという観葉植物を「無口だし、俺と同じで、根がない」といいながら世話をする様子を見て、
マチルダは「大地に植えれば根を張るわ」と言います。

ここまで散々だった二人の人生に、今後そんな安心や、温かみのある未来もあるかもしれないといった意味を、
この時、マチルダ意図して言ったかはわからないですが、

こんなやり取りがあったからこその、印象的な結末があるのかなと思いました。

このレオン、ビターなエンディングに向けての下地や、伏線が、至る所にあるんですよね。

あ、このちらりカットもそうだ!このセリフも、こんなこと言わせちゃって、もう!
みたいな、発見が見直すといくつもあります。(ただ、脚本は2、3日で書かれたという話ですが…)

好きに映画って、そうやってどんどん好きになって行っちゃうんですよねー

 

それ、次のレビューでまたお会いしましょう!

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